レアアース市場の将来性|2036年、市場規模はどこまで伸びるのか
はじめに:レアアース市場、今後10年でどうなる?
EV、風力発電、防衛、電子機器——レアアースが支える産業はどれも成長分野ばかりです。では、レアアースそのものの「市場」は、これからどれくらい大きくなるのでしょうか。この記事では、複数の市場調査会社の予測データをもとに、10年後・2036年ごろのレアアース市場規模を試算し、あわせて石油市場と比較することで、その立ち位置を具体的な数字で見ていきます。
市場調査各社の予測を並べてみる
レアアース市場の予測値は、調査会社によってかなり幅があります。これは「レアアース金属だけ」を対象にするか、「化合物や磁石まで」含めるかなど、集計範囲の違いによるものです。まずは主要な調査機関の予測を並べてみましょう。
| 調査会社 | 2025年時点の市場規模 | 予測年の市場規模 | 年平均成長率(CAGR) |
|---|---|---|---|
| DataM Intelligence(元素ベース) | 約38億ドル | 2035年に約83億ドル | 8.3% |
| Market Research Future(金属ベース) | 約64億ドル(2024年) | 2035年に約122億ドル | 6.08% |
| Precedence Research(金属ベース) | 約41億ドル | 2035年に約108億ドル | 10.12% |
| Vantage Market Research(金属ベース) | 約155億ドル | 2035年に約377億ドル | 9.3% |
| IMARC Group(元素ベース、範囲最大) | 約140億ドル | 2034年に約412億ドル | 12.32% |
下は約80億ドル台から、上は400億ドル台まで、実に5倍近い開きがあります。ただし、どの予測にも共通しているのは「年6〜12%台で着実に拡大していく」という方向性そのものです。
2036年の市場規模を試算してみる
各社の予測年は2034〜2035年までのものが中心なので、ここから1〜2年分を同じ成長率で延長し、「2036年(10年後)」時点の目安を試算してみます。
保守シナリオ:年6%前後の成長が続いた場合、2036年の市場規模はおよそ130億ドル前後
強気シナリオ:年12%前後の成長が続いた場合、2036年の市場規模はおよそ500億ドル前後
つまり10年後のレアアース市場は、控えめに見ても現在の2倍前後、強気に見れば3〜4倍規模に拡大している可能性があるということです。もちろんこれは各社予測をもとにした延長試算であり、確定した数字ではない点には注意が必要です。
石油市場と比べると、実はまだ「小さい」
ここで視点を変えて、レアアース市場を石油市場と比較してみましょう。調査機関によって幅がありますが、2025年時点の世界の石油市場は3.8兆〜8.4兆ドル、石油・ガスを合わせた市場では7〜9兆ドル規模とされています。
| 市場 | 2025年前後の規模 | 2035年前後の規模 |
|---|---|---|
| 石油市場 | 約3.8兆〜8.4兆ドル | 約5.1兆〜12.8兆ドル |
| レアアース市場(元素・金属ベース) | 約40億〜155億ドル | 約80億〜412億ドル |
強気シナリオで2036年に500億ドルへ拡大したとしても、石油市場(数兆ドル規模)と比べれば、その規模はわずか0.5〜1%程度にすぎません。金額だけで見れば、レアアースは今後10年経っても石油の100分の1にも満たない「小さな市場」のままだということです。
それでも見逃せない、レアアースの「レバレッジ」
ただし、ここが面白いところです。レアアースは市場規模こそ小さいものの、その先にある巨大産業を丸ごと止められるだけの影響力を持っています。EVの世界販売台数は2024年時点で1,700万台を超え、2030年には新車販売の4割程度に達するとの見方もあります。EV1台あたり1〜2kgのネオジム磁石が使われることを踏まえると、たった数千ドル分のレアアースが、数百万円する自動車1台の性能を左右する構図が見えてきます。
風力発電、防衛システム、半導体製造装置なども同様です。市場規模としては石油の何百分の一でも、代替の効かない「工業のビタミン」として、川下にある巨大産業の生殺与奪を握っている——これがレアアースという資源の本当の面白さだと言えるでしょう。
成長を牽引する4つの要因
1. EVシフトの加速
EVモーター用の永久磁石需要は、レアアース市場拡大の最大のドライバーです。高性能なレアアース磁石市場だけでも、2026年の約89億ドルから2035年には約192億ドルまで拡大するとの予測があり、その45%はEV向け需要が占めるとされています。
2. 風力発電の拡大
大型風力発電機、特に洋上風力では、増速機を使わない直接駆動方式が増えており、1基あたりより多くの永久磁石を必要とします。再生可能エネルギー分野は磁石需要の中でも特に成長率の高いセグメントとされています。
3. 防衛・宇宙分野の需要
各国の防衛予算拡大にともない、ミサイル誘導システムやレーダー、航空機など、軍事用途でのレアアース需要も伸びています。西側諸国による調達先の多角化・国内サプライチェーン構築の動きも、この分野の投資を後押ししています。
4. 電子機器・データセンターの拡大
スマートフォンやハードディスクに加え、AI関連のデータセンター向けサーバーやロボティクス分野でも、精密なモーターやセンサーに使われる磁石需要が伸び続けています。
まとめ:小さいけれど、止められない市場
10年後の2036年、レアアース市場は現在の2〜4倍程度、金額にして130億〜500億ドル規模に達している可能性があります。それでも石油市場と比べれば100分の1にも満たない、金額としては決して大きな市場ではありません。しかしその小ささこそが、逆にこの資源の特異性を物語っています。わずかな量で巨大産業の性能と存立を左右する——レアアースの本当の価値は、市場規模のグラフではなく、その「レバレッジの大きさ」の中にあるのです。
本記事の市場規模データは、2026年前半までに公表された複数の市場調査会社(DataM Intelligence、Market Research Future、Precedence Research、Vantage Market Research、IMARC Group等)のレポートをもとに、2026年8月時点の情報として作成しています。「2036年」の数値は、各社が公表する2034〜2035年までの予測を同じ成長率で延長した試算であり、各社の公式予測値ではありません。市場予測は前提条件により大きく変動するため、投資判断等に用いる場合は最新の一次情報をご確認ください。